私たちがつくりたかったのは、大豆を少し加えたパンではありません。
大豆をたっぷり使い、大豆そのもののおいしさを感じられるパン。
しかし、大豆をたくさん使えば、それだけでおいしいパンになるわけではありません。大豆の配合を増やしながら、パンとしてのおいしさも高めていく。そのために、素材の選び方から配合、仕込み、発酵、焼成まで、ひとつずつ試行錯誤を重ねてきました。
そして現在も、卯の花パンの製法は完成したものではありません。もっと大豆をおいしく。その答えを探しながら、今日もパンをつくっています。
大豆パン
大豆を加えたパンではなく、大豆を主役にしたパン。
ひとくち食べて、大豆のおいしさを感じられるパン。
そのためには、大豆そのものをパンの主役にする必要がありました。しかし、大豆をパンにする上で大きな障壁となったのが、食感と風味です。
大豆の配合を増やすほど、生地はボソボソとした食感になりやすく、食べたときに大豆特有の青臭さを感じることもあります。かといって、大豆を減らせばパンはつくりやすくなりますが、今度は大豆の存在が薄れてしまいます。
大豆をしっかり使いながら、しっとり、ふんわり、もちもちとした食感に。そして、ひとくち食べて素直に「おいしい」と思えるパンに。その両立を目指して、原料、配合、発酵、焼き方まで試行錯誤を繰り返してきました。そうして生まれたのが、卯の花パンの考える「大豆パン」です。
大豆濃度70%
大豆を主役にするという、私たちの答え。
卯の花パンでは、開発初期から「大豆濃度」という考え方を大切にしてきました。
大豆濃度とは、パンに使われている原料のうち、大豆由来の原料がどのくらいを占めているのかを表すために、私たちが設けた配合上の指標です。現在の卯の花パンは、その大豆濃度を70%以上としています。
ただ、大豆の割合を増やせば増やすほど、おいしくなるわけではありません。大豆を増やすことで、食感、膨らみ、風味など、パンづくりにはさまざまな課題が生まれます。
そこで私たちは、大豆粉だけに頼るのではなく、豆乳、きな粉、おから、味噌、大豆油など、同じ大豆から生まれながら性質の異なる原料を組み合わせてきました。粉になった大豆。液体になった大豆。発酵した大豆。油になった大豆。それぞれの特長を生かしながら組み合わせることで、大豆を主役にしながら、パンとしてのおいしさをつくっていく。
「大豆濃度70%」は、単に大豆をたくさん入れたという数字ではなく、大豆のおいしさをどこまでパンにできるかを追い続けてきた、卯の花パンのものづくりの指標でもあります。
国産大豆
主役になる素材だから、きちんと選ぶ。
卯の花パンが国産大豆にたどり着いたきっかけは、意外にも理屈が先ではありませんでした。
おいしさを追求して試作を続けていたある日、「国産大豆でつくったらどうなるだろう」と試してみたところ、私たち自身が味わいの違いを強く感じたことが始まりでした。
なぜだろう。
そう考えて大豆について調べていくと、海外と日本では、大豆の利用のされ方そのものが大きく違うことを知りました。
世界で生産される大豆の多くは搾油や飼料などに利用され、人が直接食べる食品として利用される割合は一部です。一方、日本で生産される大豆は、豆腐、納豆、味噌、煮豆など、食品用途を中心に利用されています。
だから国産大豆なら必ずおいしい、という単純な話ではありません。それでも、人が食べる大豆として長く育て、選び、使ってきた日本の大豆には、大豆を主役にする私たちが向き合う価値がある。
そう考え、卯の花パンでは大豆由来の主要素材に国産大豆を使用しています。主役になる素材だからこそ、これからも味を確かめながら選び続けます。
水ではなく、大豆で大豆をつなぐ
仕込みから、大豆のおいしさを。
パンづくりには、生地をまとめるための水分が欠かせません。
卯の花パンでは、その水分にも大豆を生かしたいと考え、豆乳を使って生地を仕込んでいます。大豆粉などの粉体に豆乳を加え、異なる形になった大豆同士を一つの生地へまとめていく。豆乳は単に水の代わりではありません。大豆の風味やコクを重ねながら、生地に水分を与える、卯の花パンづくりを支える大切な素材の一つです。
大豆を、大豆で仕込む。
そんな発想も、大豆を主役にするパンづくりから生まれました。
大豆をパンにする独自製法
パンの技術に、大豆をおいしくしてきた知恵を
卯の花パンの製法の基本にあるのは、もちろんパンづくりです。こねる。発酵させる。成形する。焼く。けれど、大豆を主役にしたパンをつくろうとすると、パンづくりのセオリーだけでは解決できないことがありました。
そこで目を向けたのが、日本で昔から大豆をおいしく食べるために培われてきた、大豆加工食品の知恵です。例えば豆腐づくりでは、大豆を水に浸し、十分に水分を吸収させてから加工していきます。納豆づくりでも、水に浸した大豆を蒸し、豆の内部まで熱と水分を行き渡らせ、やわらかな状態へ整えていきます。
豆腐と納豆とパン。
できあがる食品はまったく違います。それでも、硬い大豆に水分を含ませ、熱を加え、食べやすく、おいしい状態へ変えていくという大豆への向き合い方には、共通する知恵があります。卯の花パンでは、そうした考え方をパンづくりに取り入れながら、吸水、仕込み、発酵、焼成などの工程を組み立てています。そして、その工程を一つひとつ手作りで実践しています。
昔から受け継がれてきた大豆加工の知恵と、パンづくりの技術。
その二つを行き来しながら、「大豆だからおいしいパン」をつくる。それが、卯の花パンが今も磨き続けている製法です。