知られていても、広がらない作物があるのはなぜか。
すでに満ちていた食卓
近世以降、大豆は欧米にも紹介されていたとされる。しかし、それが日常の作物として広く栽培されるまでには長い時間がかかった。ヨーロッパにはすでに小麦や大麦、そら豆、レンズ豆などが根づいており、食の体系は安定していた。新しい作物が入り込むには、空白が必要なのかもしれない。満ちている場所では、未知の豆は急いで選ばれる存在ではなかった。
加工の壁
大豆は、そのままでは扱いにくい。煮る、すりつぶす、発酵させるといった工程が前提になることも多い。東アジアでは積み重ねられてきた加工の知恵が、欧米にはすぐには共有されなかったと考えられている。作物だけが移動しても、使い方まで同時に伝わるとは限らない。大豆は、種そのものよりも、それを扱う文化とともにあった作物だったのかもしれない。